大阪・京都の祭り歳時記

この街の一年は、祭りで区切られています。夏の夜を焦がす天神祭、一か月つづく祇園祭、平安装束が都大路をゆく葵祭——。毎年いつ頃、何を祝う行事なのかを、由来と見どころとあわせて四季ごとにまとめました。旅の時期と重なれば、その街の「ハレの日」に立ち会えます。

春(3〜5月)

葵祭あおいまつり

京都
時期
毎年5月15日
場所
京都御所〜下鴨神社〜上賀茂神社
京都三大祭

葵祭は、下鴨神社(賀茂御祖神社)と上賀茂神社(賀茂別雷神社)の例祭で、正式には「賀茂祭」といいます。平安時代には「祭」といえばこの賀茂祭を指したほど格式が高く、その起源は伝承では6世紀ごろ、天候が荒れて作物が実らなかった際に賀茂の神を祀ったことに始まると伝わります。祭りを彩る二葉葵(ふたばあおい)が、名の由来です。

祭りの中心は、毎年5月15日に行われる「路頭の儀」。平安装束をまとった約500人と、馬や牛車の行列が、京都御所から下鴨神社を経て上賀茂神社まで、およそ8キロの道のりを進みます。王朝絵巻がそのまま街に出てきたような、京都の初夏の風物詩です。

夏(6〜8月)

愛染まつりあいぜんまつり

大阪
時期
毎年6月30日〜7月2日
場所
愛染堂勝鬘院(大阪市天王寺区)
大阪三大夏祭り

愛染(あいぜん)まつりは、毎年6月30日から7月2日に行われる、大阪の夏祭りの先陣を切る行事です。「大阪三大夏祭り」は、この愛染さんで始まり、天神祭を経て、住吉さんで終わる——と言われます(三つ目を生國魂祭とする説もあります)。会場の愛染堂勝鬘院(しょうまんいん)は聖徳太子ゆかりと伝わる寺で、本尊の愛染明王が名の由来です。

初日の名物が、浴衣姿の愛染娘を乗せた宝恵駕籠(ほえかご)のパレード。「愛染さんじゃ、宝恵かご!」の掛け声とともに練り歩きます。夏の浴衣を初めて着る「浴衣まつり」としても親しまれてきました(一時は露店やパレードが縮小しましたが、近年は復活しています)。

祇園祭ぎおんまつり

京都
時期
毎年7月1日〜31日(山鉾巡行は前祭7月17日・後祭7月24日)
場所
八坂神社・四条烏丸ほか京都市中心部
日本三大祭京都三大祭ユネスコ無形文化遺産

祇園祭は、7月のひと月をまるごと使って行われる八坂神社の祭礼です。その起こりは平安時代、疫病の退散を祈る「御霊会(ごりょうえ)」にさかのぼります。貞観11年(869年)、都に流行した疫病を鎮めるため、当時の国の数にちなむ66本の鉾を立てて祇園の神を祀ったのが始まりと伝わります。千年をこえて受け継がれ、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。

見どころは、「動く美術館」とも呼ばれる山鉾(やまほこ)の巡行です。豪華な懸装品で飾られた29基の山鉾が都大路を進みます。巡行は前祭(さきまつり)が7月17日、後祭(あとまつり)が7月24日。その数日前の夜には、駒形提灯に灯がともる宵山(よいやま)が街を包みます。山鉾町から八坂神社・祇園の界隈は歩いて回れます。

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天神祭てんじんまつり

大阪
時期
毎年7月24日(宵宮)・25日(本宮)
場所
大阪天満宮・大川(旧淀川)一帯
日本三大祭大阪三大夏祭り

天神祭は、学問の神・菅原道真を祀る大阪天満宮の祭礼で、京都の祇園祭、東京の神田祭と並ぶ日本三大祭の一つです。天暦5年(951年)ごろに始まったと伝わる、千年をこえる歴史を持ちます。本宮は毎年7月25日(前日24日が宵宮)です。

見どころは、「火と水の祭典」と呼ばれる本宮の夜。約3000人の行列が街をゆく陸渡御(りくとぎょ)に続き、大阪の街なかを流れる大川(旧淀川)を、神霊を乗せた船の列が行き交う船渡御(ふなとぎょ)が繰り広げられます。その頭上には奉納花火。川面に映る篝火と花火が、大阪の夏の夜を焦がします。

住吉祭すみよしまつり

大阪
時期
毎年7月下旬〜8月1日ごろ
場所
住吉大社(大阪市住吉区)
大阪三大夏祭り

住吉祭(すみよしまつり)は、海の神を祀る住吉大社の祭礼で、大阪の夏祭りの締めくくりとされます。「愛染さんで始まり、住吉さんで終わる」——大阪三大夏祭りの最後を飾る行事です。奈良時代には「御解除(みはらえ)」として恒例化していたと伝わる、古い歴史を持ちます。

7月31日の例大祭では、罪や穢れを祓う夏越祓(なごしのはらえ)神事が行われ、茅の輪をくぐります。翌8月1日には、神輿が街を渡る神輿渡御祭。住吉大社は、あの急な反橋で知られる海の守護神。門前のこのエリアに泊まれば、夏祭りの熱気をすぐそばで感じられます。

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五山送り火ござんのおくりび

京都
時期
毎年8月16日
場所
京都市を囲む五つの山
京都四大行事

五山送り火(ござんのおくりび)は、毎年8月16日の夜、京都を囲む山々に炎で文字や形が浮かび上がる、盂蘭盆(うらぼん)の行事です。お盆に帰ってきたお精霊(しょらい)さん——死者の霊——を、再びあの世へ送り出す「精霊送り」の意味を持ちます(地元では「大文字焼き」とは呼ばず、「送り火」と呼びます)。

灯される火は五つ。大文字(だいもんじ)、妙・法、船形、左大文字、そして鳥居形。時間差で次々と山に浮かび上がり、市内の各所から眺められます。祇園祭・葵祭・時代祭とあわせて「京都四大行事」に数えられる、京都の夏の終わりを告げる風景です。

秋(9〜11月)

岸和田だんじり祭きしわだだんじりまつり

大阪
時期
毎年9月中旬(敬老の日の連休)ごろ ※地区により10月にも
場所
岸和田市(大阪府南部)

岸和田だんじり祭は、大阪府南部・岸和田に伝わる、勇壮な祭りです。有名な岸和田地区の祭礼は毎年9月中旬(敬老の日の連休のころ)に行われます(東岸和田など市内の他地区では10月にも行われます)。その起こりは、1745年に町の人が実りを祈って祭を始めたことにさかのぼるとされます。

最大の見どころは、「やりまわし」。数トンものだんじり(地車)を、猛スピードのまま交差点で直角に方向転換させる、息をのむ豪快さです。梁や欄間にびっしりと施された精緻な木彫りも見もの。大阪の秋の到来を告げる、熱気あふれる祭りです。

時代祭じだいまつり

京都
時期
毎年10月22日
場所
京都御所〜平安神宮
京都三大祭

時代祭は、平安神宮の大祭です。三大祭のなかでは歴史が新しく、明治28年(1895年)、平安神宮の創建と平安遷都1100年を記念して始まりました。日付の10月22日は、桓武天皇が794年に平安京へ都を移した日——いわば「京都の誕生日」にちなみます。

見どころは、「時代行列」。約2000人が、明治維新から平安遷都まで時代を逆にさかのぼる順で、各時代の装束をまとって歩きます。約2キロにおよぶ行列は、さながら生きた歴史絵巻。京都という都が積み重ねてきた千年の時間を、装束の移り変わりでたどれます。

鞍馬の火祭くらまのひまつり

京都
時期
毎年10月22日
場所
由岐神社(京都市左京区鞍馬)
京都三大奇祭

鞍馬の火祭は、京都の北・鞍馬の里の由岐神社(ゆきじんじゃ)で、毎年10月22日(時代祭と同じ日)の夜に行われる火の祭りです。天慶3年(940年)、御所から由岐大明神を鞍馬へ迎えた際、里人が松明を掲げて神を出迎えた——その故事を伝えるものとされます。

夜、「サイレイヤ、サイリョウ」の掛け声とともに、大小の松明を担いだ男衆が里を練り歩き、集落は炎に包まれます。京都三大奇祭の一つに数えられます(なお三奇祭のうち太秦の「牛祭」は近年休止しています)。山あいの、荒々しくも神聖な夜です。

冬(12〜2月)

十日戎とおかえびす

大阪
時期
毎年1月9日(宵えびす)・10日(本えびす)・11日(残り福)
場所
今宮戎神社(大阪市浪速区)ほか

十日戎(とおかえびす)は、商売繁盛の神・えびす様を祀る、大阪の新年を代表する行事です。毎年1月9日の宵えびす、10日の本えびす、11日の残り福の三日間、今宮戎神社をはじめ各地のえびす社が、福を求める人でにぎわいます。

境内には「商売繁盛で笹持ってこい」の掛け声が響き、福娘たちが、縁起物の吉兆(きっちょう)を結びつけた福笹を授けます。宝恵駕籠(ほえかご)の行列が街を練り歩くのも名物。一年の商いの願かけに、大阪じゅうから人が集まる、正月ならではの光景です。